穏やかな定年後の生活を過ごすのは多くの高齢者にとって当たり前のことだった。しかし、作曲の情熱に励まれ、80歳を間近に控える川上貞夫さんは異彩を放つ定年後生活を選んだ。2020年以来、川上さんは中国語曲の作詞をはじめ、自費でミュージシャンを招いて作曲してもらい、歌唱をしている。この4年間で、彼は30曲以上の楽曲を制作・発表し、インターネットで数十万回クリックされたそうである。そしてこれらの曲のほとんどは、長江の南に位置する水の郷、無錫にまつわるものだ。
1980年代、「無錫旅情」という歌が日本で流行し、「太湖の真珠」と呼ばれる無錫の風光明媚な風景を見ようと、多くの日本の友人たちが無錫に足を運んだ。若き日の川上さんも、この歌に惹かれて無錫に行きたくなった。このご縁もあって、1990年代半ば、株式会社岩井製作所に勤めていた川上さんは、パナソニックの冷凍機にサポートサービスを提供する企業を設立するために無錫に派遣された。それ以来、川上さんは23年間も無錫に駐在した。2019年、川上さんは体調が悪化した妻の世話と看病をするため、事業を手放して日本に戻った。
故郷の日本にいながら、無錫での思い出が常に川上の心に響いている。無錫への思いを伝えるため、帰国後川上さんは住んでいたコミュニティが主催する「歌の会」に積極的に参加し、「無錫旅情」「茉莉花」「煙花三月」など江南の風情あふれる中国語の歌を歌った。
川上さんを驚かせたことに、これらの中国語の歌は「歌の会」に参加する日本人の間で大人気だということだ。 みんなから好評を受け川上さんは、自身の「太湖の真珠」への深い愛着と相まって、日本に帰国して1年後、無錫にまつわる中国語の歌を作ることを思いついた。 その第一歩は歌詞を書くことだった。 しかし、彼にとってこれは難しいことではなかったようだ。
川上さんは重慶師範学院(現・重慶師範大学)に交換留学された経験があり、中国語能力がしっかりしている。また、少年時代から中国古詩を愛し、無錫詩友会に入会したことがある。そのほかに、中国語で書かれた散文やエッセイアンソロジー、文学と歴史に関するエッセイを出版したり、いくつかの長編小説も執筆したりしていた。中国文化への深い造詣と豊富な執筆経験を持つ川上さんにとって、中国語の歌詞を書くのはさほど難しいことではなかった。
川上貞夫さんが創作したエッセイ集と作詞したアルバム
広島のご自宅で自分のオリジナル中国語エッセイ集を読む川上貞夫さん
初の中国語曲「清明橋下」で友人から賞賛と激励を受けた川上さんは、その後も努力を続け、「暗恋」を創作した。友人の勧めで北京で開催された「詞曲中国」に応募したところ、銀賞を受賞し、創作への情熱に一気に火がついた。2020年以降、川上さんは30曲以上の作詞を手がけ、そのほとんどが無錫に関するものだ。また、毎年「詞曲中国」に出場し、激戦の中で金賞2回、銀賞2個を受賞した。
川上さんが「詞曲中国」で獲得したトロフィー
ソングライティングで小さな成果を挙げたのは、無錫に対する純粋な愛があったからだと川上さん。彼は無錫を「第二の故郷 」とみなし、「自分は地元の人よりも無錫を愛している」と愛情を込めて語っている。
川上さんの歌「人間酔美桜花季」(酔いどれ、桜舞う季節)は、美しい桜が舞う無錫の春を描いている。「日本人が中国で桜を見るとき、それは中国人が日本でパンダを見るときのような、一種の心のこもった愛情がある」と川上さんが言うように、無錫の桜は春の限られた美しさであるだけでなく、故郷への愛を表す媒介のように映っている。
友達と無錫で写真を撮る川上さん
無錫の桜は中日友好交流の証しでもある。1986年5月、日本の民間友好訪問団が無錫を訪れ、地元政府と中日友好記念事業を展開しようと話し合った。その後の30年間で、鹿頂山から十里芳堤まで、中日友好林から桜谷まで、3万本以上の桜が植えられ、春になると桜が咲き乱れる。
川上さんは、無錫の桜の植樹活動に参加したことを誇らしげに語り、無錫で満開の桜を見るたびに、中日友好が末永く続くことを心から願うと語った。
「美しい風景には美しい情感が込められているのだから、ソングライターとして、視覚的な美しさを表現するだけでなく、その美しさを国境や国を超えた人間的な美しさへと昇華させる責任がある」と語る川上さんは、両国の人々が世代を超えて築き上げてきた友情を音楽で表現し、それを歌うことで、この友情が受け継がれていくことを望んでいる。
川上さんの作品は、願いを伝えるのだけでなく、中国文化と日本文化の融合をも体現している。川上さんは日本文学の創作技法と中国文化の要素を融合させ、独自の芸術スタイルを形成した。
高齢でありながら、川上さんは創作の筆を置くつもりはない。貯めたお金で作詞を続けるという。
川上さんは将来について、タイミングを見て日本の歌手を招いて自分の曲を歌ってもらい、日本の友達へのプレゼントとしてこれらの曲をアルバムに収めたいと語っている。 「無錫旅情」のように、これらの作品が架け橋となり、より多くの日本人が音楽を通して無錫を理解し、無錫を好きになることを願っている。
出典:中国日報網
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